呟怖〜形見分け〜
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『形見分け』
迚仲の良い母娘がいた、見た目も若かった母は並んで歩くと少し年の離れた姉妹に見える程。
何でも話し合える友達親子だったという。然し不幸は突然やってくる。
夕飯の買い物を済ませ家路へと急ぐ途中、大型トラックの脇見運転により即死した。
娘は余りに突然の出来事に心がついて行けず、何も考えられなくなり暫く寝込む事になった。
其でも何とかお葬式をすませ初七日を終えて形見分けの頃には何とか起き上がれる程に回復。
亡くなった母の遺品は娘が殆どを管理する事に、その方が亡母も喜ぶだろうと親族皆、納得した。
然しその頃から娘の様子が少しずつおかしくなって行く事に最初は誰も気づかなかった。
最初に気づいたのはその家の家長つまり父、普段の口調から全く違う口調に変わっていた。
最初は巫山戯ているのだろうと思っていたが一向にやめる気配もなく注意するも娘は意に介さず。
本人は全く無意識でやってるようであった、或る時、ふとその娘の言動にはたと気づいた。
娘の立ち居振る舞いは正に亡くなった妻と同じ、見れば生前妻が好んで着ていた服を纏っていた。
背格好も二人は似ていた為に後ろ姿だけ見ると丸で其処に亡くなった妻が立っているかに思えた
其からもどんどん娘は妻に全てが酷似してきた、些か近所の人も余りにも似てきた為に気味悪がりご近所付き合いも段々と疎遠になってしまった。
いよいよこれはやばいと感じた父親は嫌がる娘を無理やり病院へ連れて行ったが何処も異常はない
だが遂に夜、父親の寝床へ娘が入ってきた時にもう我慢の限界と近くのお寺へ助けを求めた。
住職は娘を見るなり直ぐ遺品を全て処分する様に父親に伝え娘が不在中全ての妻の遺品を処分した
すると帰ってきた娘は其を咎める事もせず、普段通りの娘に戻っていたという。
住職の話だと妻の遺品に残留思念が強く残り、娘の体に妻の魂が入り込んでしまったのだという
然し一つの体に二つの魂が入る事は通常ありえず段々娘の魂は母の魂に浸食されていたのだという
このまま侵食され続ければ娘の魂は完全消滅し、母の魂と入れ替わっていたかもしれないと言う
其から父娘は毎日の仏壇の挨拶を欠かずに行い、其以降娘の体に母親の魂が入り込む事は無くなったと言う事であった。