呟怖〜シミ


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#呟怖
#滲み

“シミ“と聞いて貴方は何を想像するだろう?

女性は“シミそばかす“の“シミ“を思うだろうか
男性は“染みだす“意味の“シミ“を思うだろうか

確かに一般的に“シミ“と言えばその2つを思う
人は多いだろうが“シミ“は其だけでは無い。

時に人の“思い“も“シミ“となる事がある。

その家はもう何代続いているのか解らない程
古い洋館でその地域では迚珍しい館だった。

ほんの数年前迄人が住んでいたらしいのだが
最後の当主に子はなく主とその妻が亡くなり
親戚も誰もいなくなり結果国所有となった。

取り壊すには勿体無い立派な洋館だったので
街の観光施設に再利用する事になったのだが
何処となく不気味な雰囲気を漂わせていて、
観光名所というより心霊スポット人気の方が
高かったと言う。

何故なら夜な夜な家から不気味な女性の声が
聞こえてくる噂が立てられたからだった。

勿論眉唾物と誰もが信じなかったが本当は
住民の何人かもその声をはっきり聞いていた
だからこそ余計に信じたくなかったのだろう

聞けば妻は当主に先立って亡くなっており、
巷の噂では当主に殺されたという物もあった

だが地元の有力者であり誰も表立って話を
する者もなく真実は闇に葬られてしまった。

だが其を裏付けるだろう証拠も確かにあった
其は応接間の壁一面にある奇妙なシミである

その形はまるで壁に張り付いているかの様な
女性の形をしたシミであったという。

当主も何度もシミを落とそうと躍起になり、
遂には壁毎取り替えたにも関わらずそのシミ
はずっと滲み出ていたのだという。

而もそのシミは当主の妻が亡くなった日から
すっとその場所に有り続けたのだという。

まるで当主をずっと監視しているかの様だと
使用人は口を揃えていっていたという。

然しシミが出来て間もなく当主も病に倒れ、
そのまま帰らぬ人となってしまったと言う。

不思議な事は当主が亡くなったその日を境に
あれだけ何度も落とそうとして駄目だった
壁のシミあとは跡形もなく消え去ったとか。

故にあのシミは奥方で旦那をあの世に引きずりこんだのだという噂が立ったのだという。

今もその洋館はひっそりと立っているという

 


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