怪談『チケット』

 

チケット転売を生業としていたA氏は
ある時を境にチケット転売を止めた。

というより忽然と姿を消してしまったという。

実はその裏には恐ろしい恨みの念が
関わっていたのである。

その日も或るライブチケットを大量購入し
A氏は転売する為の準備を勧めていたと言う。

だが今回は少し様子が違っていた。

チケット購入段階から幾つもトラブルに見舞われ予定購入枚数を大幅に下回る枚数しか獲得出来なかった。

今思えばその時既に警告は発せられていたのだがA氏はその警告に全く気づけなかった。

普段の半分以下しか手に入らなかった為に
予定獲得枚数を大幅に下回り
何とか高額で売り買いせねばと
あの手この手を使い何とか売り切ったのだが
その直後から謎の悪夢に魘され
毎夜同じ時間に目が覚めてしまう様になった。

又、その夢が実に気持ちの悪い夢であった。

其は赤子を背負った母親が鬼の形相でA氏に近付き首を絞める夢なのだそうで最も気味悪いのは其の母親がおぶっている赤子には首から上がなく首部分は血みどろになっているという夢であった。

その夢を毎夜A氏は同じ時間に見るようになり、
どんどん痩せ細り周りも心配する程ガリガリに痩せてしまったのだそうである。

勿論医者に診て貰ったが原因が掴めないまま
遂にはある日を境に姿を消してしまった。

其から暫らく経って全く別の場所で
男性の首無死体が上がりDNA鑑定の結果、
死体はA氏である事が判明したと言う。

警察は殺人事件として捜査したが
結局犯人は見つからず事件は
迷宮入りで幕を閉じた。

只、彼を知る一部の人間はこう言っていた、

『あれは間違いなく祟りだ』と。

其は彼が見た夢と全く同じ場面が出てくる
怪談話が彼が高額転売した怪談ライブの演目に
あったからなのだそうである。

そしてその怪談のラストと
彼の死体の状態も全く同じなのだそうである。

偶然の一致として片付けるには
余りにも偶然が過ぎるとは思われないだろうか?

我が目には怪談の元ネタとなった
親子の恨みの念がそうさせたとしか
思えないのだが…。
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